この野良猫と付き合い始めて2年が経った頃、柿の葉が落ちはじめた時期だったと記憶しているが、彼が一匹の子猫を連れてうちの庭にやって来た。

まるで、うちには「この子のことをよろしく頼みます。」、子猫には「今度からはここでご飯をもらうんだよ。」といった感じでした。内田百けん(けんは門構えに月)先生の『ノラや』に描かれていた場面とよく似ていた。

それから少し経った秋の終わり頃だったと思うが、彼は姿を見せなくなった。その前にうちに来た日、自分や自分以上に彼を可愛がっていた妹にゴツンゴツンと頭をぶつけてきた、その感触を今も覚えている。

子猫を連れてきた後でも何度か姿を見せていたから皆、とても心配した。結局それ以来、彼の姿を見ることはなかった。うちの家族の中では彼が年寄り猫と知っていたから、それで姿を隠したんだろう、という結論になった。

猫は死期を悟ると姿を隠すというから、それだろう、と彼を捜すのをやめた。

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