いつまでたっても懐くことのなかった彼との別れは突然やって来た。

確か、雪が降り始める前だったと記憶しているからその年の晩秋、彼は姿を見せなくなった。

彼とよく一緒にいた野良猫仲間は姿を見せていたが、そこには彼の姿だけがなかった。

懐いてくれることはなかったが、彼を可愛がっていたうちの家族は暇を見つけては彼を捜した。




そして、雪がとけた春の初めになって彼は見つかった。彼はうちの近くにいた。近所に住む人から、「そこの家の納屋で猫が死んでる。」という情報が入ったのだ。

家族の誰もが、「まさか・・」と思った。だが、その猫は間違いなく彼だった。

どうやら「猫いらず」を口にしてしまったことが死因のようだった。

誰が仕掛けたのかはついに判らなかった。

野良であったが故の悲劇だと思われた。

彼はうちから道路を挟んだ斜め向かいの住む人のいなくなった家の納屋で死んでいた。その身体には誰がかけたのか、布切れがかかっていた。布団をかけて眠るような姿だった、と確認に行った妹が言っていた。

「お前、そんなところにいたのか。」と、いつでもうちの様子が分かる場所で死んでいた彼のことを考えた。ついに懐いてくれることはなかったが、彼はうちを気に入ってくれていたようだ。

うちの猫ではなかったが、彼の遺骸は妹が毛布で包んで抱きかかえてうちに連れて来て、庭の隅に埋葬した。

花が咲き乱れる庭の脇に彼は眠っている。



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